著者:Daniele Manfredini等 出展:J periodontal 2015 86、 546-555
目的
本稿では、ブラキシズムそのものが歯周組織にダメージを及ぼしうるという証明は存在するかという疑問に答えるため、MEDLINEとSCOPUS論文を系統的に精査する。
方法
歯周欠損、付着レベルの減少、骨喪失、歯牙の動揺、移動、並びに歯周組織の知覚の変化とブラキシズムとの間に存在しうる関係が調べられた、ヒト臨床研究を適格とした。
曖昧なブラキシズムの診断に基づく所見の、内部妥当性に主に焦点を当てながら、the Critical Appraisal Skills Programの質評価を適用することで方法学的な欠点を見つけ出した。
結果
本レビューに取り込んだ研究は計6本となった。
研究デザインの異質性がため、データのメタ分析を行うことは出来なかった。
全般的に歯周構造に対してブラキシズムが及ぼす唯一の作用は、歯周組織の感覚の増大な様に思われる。方法学的な質は、最善でないことが示され、質に関する項目のうち、半分以上を満たした研究は半数しかなかった。大半の研究に共通していた欠点は、ブラキシズムの診断に、自己報告が採用された点で、例外は、家庭環境下での睡眠中に咬筋活動が筋電図で測定された1本の論文であった。
もう一つの大きな欠点として、特定の議題に関するそれぞれの論文が非常に不良であったために、それぞれの論文で出された所見と利用可能な証明との一致が不明瞭であった点が挙げられる。このため全体的に、ブラキシズムと歯周欠損の関係に関する研究の質には、改善の余地があり、現状の質はこの議題に関する質の高い証明を提供するには、充分ではないと言える。
論文の質的評価では、各々の論文の著者等によってブラキシズムと歯周欠損の因果関係が正であると主張されたにせよ、また負と主張されたにせよ、Hill基準の分析により判断して、因果関係に関する結論が半数以上の基準を満たしていた論文はたったの3本であった。
全論文に共通する欠点として、縦断的観察の欠如が原因で、勾配効果つまり用量―応答効果に関する情報と時間的関係に関する情報が欠如していたことが挙げられる。
またこの議題に関する論文の少なさがため、一貫性、統一性、及び、類推の各基準に関して取り出すことの出来た情報は、非常に少なかった。
結論
歯周問題とブラキシズムの因果関係に関する健全な結論を、本レビューで下すことを、不十分な量と質の論文が妨げている。
しかし、それでも、ブラキシズムそのものは、歯周組織にダメージを及ぼしえないと言っても良いだろうと思われる。しかし、これまた重要なことであるが、方法学的な問題、特に就寝中のブラキシズム検査に、方法学的な問題があるため、この疑問点を更に解明するためには、無作為対照付治験などのような、より質の高い研究が必要とされる。