歯内療法における疼痛管理

歯界展望Vol132 No.5 2018-11

根管治療の術後性疼痛はさらに、1、一般的に起こりうる正常な反応としての術後性疼痛、2、根管治療で取り除くことができなかった起炎因子による疼痛、3、非歯原性疼痛に分けられる。

正常な反応としての術後性疼痛に関して、通常、痛みのピークは術後2~3日に起こることが多く、そのほとんどは1週間以内に治まることが多い。追加処置は切開排膿等の処置が必要なケースを除けばほとんどないが、痛みが強い場合は鎮痛薬の服用が有効である。アセトアミノフェンをNSAIDsと組み合わせると、それら単独での鎮痛効果を上回るとの報告もあり、第一選択であるNSAIDsのみで十分な鎮痛効果が得られない際には組み合わせて用いるのも効果的である。

根管治療で取り除くことができなかった起炎因子による疼痛は以下の場合を除き、外科的歯内療法が適応となる。
・全身疾患などにより外科処置が行えない場合
・疼痛の原因と歯との因果関係が明らかでない場合

非歯原性疼痛
痛みの原因が歯ではない痛み
根管治療後も消失しない痛みの約3%が非歯原性疼痛であったという報告もある。

患者が歯の痛みを訴えている場合、歯科医師として知っておくべき非歯原性疼痛について、以下に示す。
①筋、筋膜性疼痛
歯痛を思わせる痛みの中では比較的多い。痛みの特徴として、持続性の鈍痛であり、疲労した咬筋や側頭筋などにおけるトリガーポイントからの関連痛が原因と考えられている。

②神経障害性疼痛
末梢・中枢神経の損傷によるもの、突発的な痛みを特徴とする三叉神経痛は、三叉神経根への血管や腫瘍などによる圧迫が原因と考えられている。抜髄や抜歯後に持続した違和感、鈍痛などを主症状とする求心路遮断性疼痛は、古くは幻歯痛とも呼ばれていた。

③上顎洞性疼痛
上顎洞炎に起因する痛み、上顎洞内圧の亢進や関連痛が原因であると考えられている。歯の生活診断で鑑別可能であるが、歯性上顎洞炎であれば、根尖性歯周炎を併発している場合が多く、その鑑別は容易ではない。この場合、診断にはコーンビームCTが有効であるが、正確な診断及び治療には医科的アプローチが必要なこともある。

④心臓性疼痛
虚血性心疾患に起因する迷走神経の関連痛が多く、下顎骨や歯に圧迫痛、灼熱痛などの痛みを生じる。

チェックポイント
①根管治療を行った後に、患者が痛みを経験することは珍しくない。しかし、このことを患者が理解していないと、治療への期待から患者の心理的不安は増大するので、術前に説明するべきである。
②術後性疼痛のほとんどは、術後2~3日がピークであり、1週間後にはほぼ消失する。この間の疼痛管理としては、NSAIDsなどの鎮痛薬が第一選択であり、鎮痛が得られない場合には、NSAIDsとアセトアミノフェンの併用も有効である。
③炎症の原因を高いレベルで排除(無菌的な処置、予後不良時の外科的歯内療法)した後に症状が残る場合は、非歯原性疼痛を疑う。