接着ブリッジの現在 評価・位置づけと行方 
日本歯科評論 vol.79 No.5(2019-5)

本稿の考察:接着ブリッジの現状
1.金属接着ブリッジ(2リテーナータイプ)の生存率は、他の補綴オプションと比較しても低いものではない。暫間補綴的な位置づけではなく従来ブリッジ、部分床義歯、インプラントと並んで少数歯欠損に対する補綴歯科治療オプションの一つ。

2.接着ブリッジを成功に導くためには、以下の診査を行い十分な症例選択が必要。

  • 歯内、歯周組織
  • 十分なエナメル質の存在
  • 動揺度
  • 欠損部近遠心径
  • 垂直被蓋

3.金属接着ブリッジ成功のための臨床操作

  • 支台歯形成:前臼歯を通じ欠損側隣接面に垂直方向のグルーブ(抵抗形態)を付与。
  • マージンの設定:歯肉炎より1mm以上離した縁上に設定。
  • 使用金属:ニッケルクロム合金やコバルトクロム合金が使用される。わが国では保険適応の金銀パラジウム合金あるいはタイプ4合金が使用されることが多い。
  • 被着面処理:機械的接着(サンドブラスト処理)と化学的接着(リン酸エッチング処理あるいは歯質接着プライマー)を得るための処理が必要。
  • 接着性レジンセメントの使用。
  • 咬合の与え方:犬歯誘導咬合あるいはグループファンクション。
  • 接着操作:試適ならびに咬合調整が終了したら、確実な防湿を行った上で、上記の支台歯と接着ブリッジの被着面処理を行う。

4.インプラント治療の盲点
上顎前歯のインプラント上部構造の切縁および歯頚線のずれが大きくなって左右対称性、臼歯部の隣接面コンタクトおよびオープンバイトとなり咬合接触が失われた症例が報告される。接着ブリッジではinfraocclusionによる審美・機能障害はおこらないため、このインプラントの意外な欠点が浮かぶ一方、接着ブリッジの良さが見直されつつある。

5.カンチレバー接着ブリッジの勧め
2リテーナータイプの金属接着ブリッジの臨床経過を同時に比較した研究はいずれもカンチレバータイプの生存率が高い。

 

まとめ
接着ブリッジは少数歯欠損に対する補綴治療オプションとして歯科治療の選択肢に加えるべきである。カンチレバー接着ブリッジは症例選択を誤らなければ臨床的価値は高い。