歯科医院のための内科学講座 全身管理、全身疾患を見据えた補綴治療のススメ まとめ  
補綴臨床Vol52.NO.3 2019-5

歯性上顎洞炎
歯性上顎洞炎は副鼻腔炎の約10%に存在し、CTによる検討では38%を占めるといわれている。臨床症状、原因歯の存在、画像診断にて総合的に診断される。原因歯としては、上顎洞と最も近接している第1大臼歯が最も高く、根管治療後の再感染、未処置の齲歯、歯周病などが原因となる。特徴は、ほとんどが一側性で、原因根尖病巣の存在、歯周病の存在、上顎洞内への異物迷入(歯根、インプラント、根管充填材など)、上顎洞穿孔の放置が認められることがある。原因は歯性感染、ストレプトコッカス、プレボテラ、ペプトストレプトコッカス、プロフィロモナス、フゾバクテリウムなど。治療法と抗菌薬は、原因歯の除去と洗浄。抗菌薬は歯性感染をターゲットに選択。

歯性上顎洞炎を未治療のまま放置した場合、近接する篩骨洞全体の炎症を引き起こし、ひいては前頭洞にまで粘膜肥厚を引き起こす。歯性上顎洞炎をきたす場合は片側性が多いが、好酸球性副鼻腔炎など両側性の病変に合併することもある。歯性感染は通常は上顎洞底には緻密な皮質骨があるので、歯槽骨を貫通して頬側に抜けてフィステルを作ったりするが、上顎洞底を越えて感染が上顎洞粘膜に達することもある。
歯性上顎洞炎の診断、医科では副鼻腔CTで行う。
①上顎洞軟部陰影 ②上顎洞と根尖部の交通(骨融解像) ③根尖周囲の軟部陰影の3条件が揃い、患者さんの自覚症状が伴う場合、歯性上顎洞炎としての治療を始める。

歯性上顎洞炎の主な症状としては、膿性鼻漏・悪臭・鼻閉感・鼻出血・後鼻漏・咳嗽・痰・頬部痛・歯痛が挙げられる。軽度の上顎洞の軟部陰影で、粘膜浮腫状変化のみの場合もあり、こうした際には将来的に歯性上顎洞炎を発症する可能性もあるので、患者さんの自覚症状を見ながら慎重に経過観察を行う必要がある。

歯科からの紹介に際して耳鼻科医の知りたい情報
① いつからどのような症状があるのか
② いつ頃からどの歯の何の病態に対してどのような治療を行っていたのか
③ 原因歯抜歯の必要性がある場合には対応が可能か否か
④ 使用した抗菌薬名、投与期間
⑤ 痛み止めや局所麻酔薬でのアレルギー有無
(ボルタレンやロキソニン使用歴の有無)