再根管治療が困難なトランスポーテーション症例に対する外科的対応

まとめ

歯科評論 vol.79 No.11(2019-11)

 
 症例の概要として、6┐に伴う根尖病変が存在し、感染根管治療を行った。しかしながら病変の改善は認められず、術後約2年で臨床症状が再発した。通常の根管治療で治癒しない難治性病変に対し再度根管治療を行うよりは外科的に対応する方が有効と考え、マイクロスコープを用いた歯根端切除を行った。その結果、以前の根管形成のエラー(トランスポーテーション)により、通常の根管形成では本来の根管形態に沿った拡大が困難な状況が確認されたが、拡大視野下での超音波切削により、未形成部やイスムスを含めた逆根管窩洞形成が達成できた。結果、根尖周囲の当科像は改善し、臨床症状も発現していない。
 マイクロスコープを用いた歯根端切除は非常に高い成功率を示している。本症例のように解剖学的形態が以前の根管治療によって破壊され(トランスポーテーション)、本来の根管に沿った根管形成や充填が困難な難症例、あるいはイスムスや扁平な楕円形根管のように機械的拡大が困難な症例では外科的対応は有効である。再治療症例においては常に非外科的再治療(再根管治療)か外科的再治療(歯根端切除術)の選択が迫られる。原則としてまずは非外科的再治療(再根管治療)が優先され、それでも治癒しない難治性病変に対して外科的再治療(歯根端切除術)を選択することになる。