開業医のための顎関節治療アップデート講座1

鑑別診断からみた顎関節鬆

著者;佐藤文明先生

商業誌;歯界展望1月2020より

顎関節鞘の診断は、あくまでも除外診断である。顎関節症の主要症状は他の疾患以外にも存在する。ではどのような疾患を除外する必要があるのだとうか?下記の図の疾患は除外するべきである。

次に、実際医科歯科大学に顎関節症として紹介されてきた患者のうち、9割が顎関節症であったが、残り1割がそれ以外の疾患であった。その内訳は下記の通り。

鑑別診断が困難な時は、少なくとも下記に示す6つの症状がないかチェックするべきとしている、
① 開口障害25mm未満
② 顎関節部や咀嚼筋部の腫脹を認める
③ 神経脱落症状を認める
④ 発熱を伴う
⑤ 他関節に症状を伴う
⑥ 安静時痛を伴う
これらは腫瘍や炎症などの時に見られる症状である。顎関節症の患者は痛みがあるときに顎関節部や咀嚼筋部が腫れていると表現することがあるが、実際に腫れていることはない。もし腫れているのであれば腫瘍や炎症を疑うべきである。神経脱落症状は腫瘍などの場合に、また発熱は炎症の場合の兆候である。他関節に症状を伴う場合は関節リウマチなどの全身疾患を疑い、さらなる検査や関連医科への対診が必要である。安静時痛(自発痛)についてはクローズドロックの初期には認められるものの、一般的には顎関節症の痛みは開口や咬合時、咀嚼時など顎関節を動かした時に起こる機能時痛であり、安静時痛が存在する場合、他の疾患を念頭におく必要がある。