著者;近藤尚知先生
商業誌;日本歯科評論 1月2020より
連載開始にあたり
情報工学(IT)の発展は目覚ましく、歯科医療の現場においても補綴装置の作製にCAD/CAMシステムが導入され、近年は口腔内スキャナーも印象に用いられるようになってきた。口腔内スキャナーによる光学印象は、保険収載こそなわれていないものの、歯学部の学生の講義で取り上げられ、国家試験にも出題されている現状を考えれば今後普及していくものと予想される。
一方、インプラントの埋入手術、補綴装置の製作に関しては口腔内スキャナーに先んじてCAD/CAM関連の技術が適用されており、診断と手術の精度向上、作業時間の短縮をはじめ、デジタル技術のもたらすメリットは大きい。なかでも埋入シュミレーションとそれを口腔内で再現するサージカルガイドのパッケージは、審美的な治療を求められる現代においては強力な手術支援システムとなり、必要不可欠ともいえる。現在口腔内スキャナーによる光学印象によって得られた画像データは、STL形式に変換すれば模型を読み込んだ画像と同様の画像となるため、作業時間の大幅な短縮が可能である。又、昨今はCBCTによる顎骨の形態、口腔内スキャナーによる歯列と粘膜の状態、3Dカメラによる顔貌の画像データを重ね合わせることも可能となり、歯列だけでなく、顔貌シュミレーションの臨床応用も現実のものとなりつつある。
口腔内スキャナーの長所と短所
1 形成と印象の評価がその場で可能
2 準備する器具材料が少ない
3 開口量が少なくても印象採得が可能
4 正確な咬合採得が可能
5 嘔吐反射のある患者に適用
6 印象採得に要する時間を短縮
7 印象材石膏模型が不要