クラウンの接着に影響される骨内インプラントの失敗 臨床症例報告

筆者
Ricardo Gapski等

出典
The International Journal of Oral &Maxillofacial Implant
Vol.23 Number 5.2008 323-326

・失敗の要素分類
外科手術と関連したもの
骨喪失
インプラント周囲何組織疾患
機械的問題
審美的/発声的結果

・生物学的失敗→インプラントの長さと径
ボディーのデザイン
喫煙
インプラントの埋入位置・骨質
インプラント周囲炎

・機械的失敗→補綴的問題
アバットメントの破折と緩み
補綴物の破折
補綴物の維持性と快適さ、患者の満足度

失敗症例の提示
・31歳ヒスパニック系女性
主訴:右上側切歯の動揺
処置:右上側切歯を抜歯し、それと同時に骨内歯科用インプラントを埋
インプラント治癒期間:4か月
20Ncmのリバーストルクを用いて、インプラントが骨統合されていることを確かめ、追跡観察レントゲン像を得た。
インプラント補綴物の最終的な接着後1ヵ月目に、術部での痛みと腫脹を訴え来院。 

現症:インプラントの遠心面には、排膿を伴う9㎜のポケットが 存在していたのに対し、右上犬歯の近臣面には浅い歯肉溝が存在していた。
来院時に得たレントゲン像上で、インプラントの遠心面におけるレントゲン不透過性物質が、大規模な骨喪失を伴いながらみられる。

局所麻酔後、術部を外科的に露出させたところ、インプラントの遠心面と頬側面における、大規模な骨喪失が明らかとなった

検討
・この症例では、余剰セメントがインプラントの失敗と考えられている
インプラントでは天然歯とは異なり、繊維付着は垂直に発達せず、水平である。
そのため、インプラント周囲溝に余剰セメントが押し込まれるとすぐに深部に入ってしまう。
プローブは、インプラント周囲組織内の方が歯牙周囲組織内よりも、より深く進入する傾向がある。
・インプラント周囲プロービングデプス測定は、歯周ポケットプロービングよりも、圧のばらつきに対してより敏感である。
ゆえに、天然歯周囲の組織と比較してインプラントは、インプラント周囲組織に埋入される余剰セメントに対して、より敏感であると推測される。

まとめ
この症例では、余剰セメントがインプラントの失敗と考えられているが、他の原因も考えられるためさらなる対照付き研究が必要である。
インプラントの失敗を回避するため、歯肉縁下の余剰セメントは慎重に取り除くべきである。
また、余剰セメントと関連した問題を回避するために審美ゾーンではスクリュー維持補綴物を使用することも一つの手段である。