骨移植材を伴う、又は伴わないオステオトームでの歯槽骨内上顎底挙上 パート2:レントゲン像上組織リモデリング

Transalveolar maxillary sinus floor elevation
Using osteotomes with or without grafting material.
Part 2 ; radiographic tissue remodeling

筆者 Bjarni E. Pjetursson 等


歯槽骨内オステオトームによる洞膜挙上後の、新生骨形成 のために、空間を維持するための移植材を利用する必要性について 専門家のなかでも意見が分かれている。現在の所、移植材を用いた報告が多いが、移植材を用いなくても周囲に骨組織が形成するという報告もある。 

目的
骨移植材の利用を伴う、またはそれを伴わない、歯槽骨内法による上顎洞底挙上後 の組織リモデリングのパターンを、評価すること

材料・方法
2000~2005年Bern, Switzerlandの大学で181名の患者の上顎洞底下に252本の インプラント(Straumann)を埋入した。2/3(163本)のオステオトームインプラントは移植材無しで埋入し、 1/3(88本)のオステオトームインプラントは移植材(粒子サイズが0.25-1mmの、脱蛋白ミネラル(BioOss)) を共に埋入した。

以下を測定観察し、移植材ありと無しで比較した。

①距離の測定
1 術前の残存骨高径 ; 歯槽骨頂AC~上顎洞底SF
2 インプラントの進入度; 上顎洞底SF~インプラント根尖部AP
3 根尖部の移植材の高径; インプラント根尖部AP~新生骨GM
4 移植材の高径; インプラントショルダーIS~移植材又は新生骨GM

②上顎洞移植リモデリング指数SGRI(AP-GMの成熟度)
③インプラントの先端部分がどの程度、移植材、または 新生骨によって覆われていたか

結果
移植材と共に埋入したインプラントの残存骨高径は、6.4mmは、移植材無しで埋入したインプラントの残存骨高径8.1mmよりも有意により低かった。

2mm以上の新生骨を得ることができる可能性は、移植材を使用しなかった場合は39.1%であったが、移植材と共にインプラントを埋入した場合には、77.9%まで上昇した。

結論
上顎洞挙上術では、移植材を使用した方が、有意に新生骨が増加した。

出典:Clinical Oral Implant2009


表題:移植材を使用しないオステオトーム上顎洞底挙上法。前向きパイロット研究3年結果。
著者:Rabah Nedir等
出展:COIR,20,2009,701-707
目的:前向きパイロット研究にて、移植材を伴わないオステオトーム上顎洞底挙上(OSFE)法を用いて、萎縮した上顎臼歯部に10ミリ以下の短いITI-SLAインプラントを埋入した。
本論文にはインプラント周囲骨レベル変化を評価した3年データを提示する。

外科処置と補綴処置
2003年4月から12月 プライベート診療所にて,25本のstraumann SLAインプラントを臼歯エリア16本 小臼歯エリア9本にOSFE法で埋入。
患者は、17名(14名女性、3名男性)平均年齢 54.2±9.6歳  範囲38-69歳。
インプラントの長さは、10ミリ、8ミリ、6ミリ、径は4.1ミリ、4.8ミリ。8本のインプラントはタイプ2の骨に12本はタイプ3の骨に5本はタイプ4の骨に埋入した。
3-4ヶ月の治癒後に、臨床的な安定性を評価した。

結果
1件の症例のインプラント埋入から3年目の検査時にかけてのレントゲン像上の追跡観察の結果では、排膿の兆候、または上顎洞と関係した病的状態を訴えた患者は皆無であった。インプラントは全て臨床的に安定していたことで、100%の生着率が達成された。
3年目で、上顎洞内の平均骨増加量は3.1±1.5ミリ、上顎洞内に突出していたインプラントの長さの平均値は1.8±1.1ミリ、平均CBLは0.9±0.8ミリであり、3年目のデータを1年目と比較すると、上顎洞内の骨は平均で0.6±0.7ミリ増加、インプラントの突出長さ0.3±0.5ミリ減少、CBLは0.3±0.4ミリ減少であった。
平均上顎洞内骨増加量をインプラント埋入時に測定したインプラントサイドのRBHと対比すると、RBHが小さめ(1-5ミリ)であった部位に埋入した20箇所全てのインプラントサイドはRBH値が5ミリを越えていた部位に埋入したそれらよりも、より多くの上顎洞内骨を得た。
術後の不快事項は、鼻血1名、鼻詰まり2名で、これらは数日以内に弱まった。
これらの事象を除いて、治癒は問題なかった。

結論
1萎縮した上顎でのOSFE治療で、骨形成を促進するのに移植材は必要ない。
2インプラントの同時埋入を伴うシュナイダー膜の挙上は、上顎洞の本来のリミットを超えて骨を作り出すのに、充分である。
3成功率は100%であったことから、移植材を伴わない本治療法は予知的であると思われる。
4、1年目の検査時に観察される骨の増加は保たれ、萎縮しない。
5、萎縮する移植材とは対照的に、骨増加は2年間で、僅かではあったが、統計的有意に増えた。