感染している部位への、インプラントの即時埋入 論文の系統的レビュー

著者:Jonathan A.Waasdrop
出展:jp2010 81 801-808
目的:病的状況を有する部位への、即時インプラント埋入の治療アウトカムに関する論文を精査し、治療提案を行うこと。本レビューでは、感染の存在は、インプラントの即時埋入の骨統合、成功を妨害するか。即時インプラント埋入前の感染に焦点を当てるために、どのような術式が用いられてきたか。に焦点を当てた
材料と方法:1982年から2009年11月にかけて発表された、MEDLINE/PubMed論文の電子検索を、2名の精査者が個別に行った。取り込み基準は、動物研究とヒト研究の両方を含めた。公表された治療法は、感染を有する部位に分類された部位へのインプラントの埋入であらねばならなかった。対照群は、本来の部位、または非感染部位と定義した。
結果6件が動物研究(2件は2種類のインプラント表面の統合性が、対照群なしで比較されたため除外)9件がヒト研究(1件は英語で書かれていなかったため除外)
根尖周囲感染が、骨統合プロセスを妨害するという点に関しては2件のイヌ研究に由来するデータで、非感染部に埋入されたインプラントと比較した時の、BICの低さが示されている。相違は1件の研究では統計的有意であったがもう1件の研究では非有意であった。
イヌにて結紮によって誘導された歯周炎欠損は、骨統合に悪影響を及ぼさないことがBICの測定より示された。しかし、抜歯理由としての歯周炎はインプラントの生着に悪影響を及ぼしうることが、ヒト研究に由来するデータより示唆された。1件の研究では有意であった。BIC値の相違に関わらず、インプラントの失敗は、どの動物モデルでも観察されなかった。歯周感染と根尖周囲感染の存在下での、インプラントの高い生着レベルが本レビューに取り込んだヒト症例シリーズと前向き対照付き治験に由来するデータにより示された。しかし、Lindeboom等の研究では、即時埋入されたインプラントの生着率は92%であったのに対し、成熟後に埋入されたインプラントは100%であった。
本レビューに取り込んだそれぞれの研究の治療術式は、抜歯窩の完全且つ徹底的なデブリマンと全身抗生剤の利用からなった。過去のレビューで示されたように、大半の研究で即時埋入されたインプラントに対して、侵襲的な抗生剤の投与があった。ヒト研究の全てで全身抗生剤が利用され多くの症例でGBRが行われたことを考えると、この術式の成功と低い感染率は、それらの使用と関係しているのかもしれない。感染部にインプラントを即時埋入する場合は抗生剤を使用すべきであることが利用可能な証明より示唆されている。
結論:動物研究とヒト研究に由来する、限られた短期データより、感染部へのインプラントの即時埋入は、実行可能で予知的な治療法であることが示唆された。意見は分かれているものの、将来の証明で何か他のことが実証されるまでは、この治療に対しては全身的抗生剤の利用が勧められる。