Healing of peri‐implant tissues after flapless and flapped implant
installation
出典:Journal of Clinical Periodontology 2011
著者:Abeer M.A.Bayounis
研究目的:
組織パンチとダイレクトアプローチがインプラント応答組織反応に及ぼす影響を調べる
材料・方法:
ビーグル犬10匹の抜歯部位にキシロカイン30㎎を注射。
それぞれの犬にて下顎両側の第二及び大三小臼歯(PM2.PM3 )を抜歯した。
口内インプラントの埋入
3か月の治癒期間後に歯科用インプラントを埋入した。
長さ8㎜、径3.3㎜で、2.8㎜のハイスムースネックと、3.5㎜のショルダー径を伴う計30本の
歯科用インプラントを埋入した。(Straumann Dental Implant System SLAActive)
外科法は以下の通り。
①フラップあり
②パンチフラップレスアプローチ
③ダイレクトフラップレスアプローチ
下顎骨を切り出し、骨量と骨ミネラル密度を分析した。
標本を加工し、組織学的、組織形態計測学的評価を行った。
A.障壁上皮の長さ(BEL)
B.結合組織の厚さ(CTT)
C.骨レベル(BL)
D.界面での骨接触率(BIC)を測定。
結果
計30本の歯科用インプラントを埋入し、全てで埋入時には初期固定が示された。
屠殺時の臨床検査では、26本のインプラントは問題なく治癒していたが、
組織パンチ法で埋入した3本のインプラントは動揺がみられ、
ダイレクトラウンドバー法で埋入した1本のインプラントは失われていた。
・μCT測定による骨体積分率
フラップあり:55±9 組織パンチ:51±4 ダイレクトアプローチ:54±5
有意の群間差は無し
組織学的評価
・フラップ有とダイレクトフラップレスアプローチ
骨反応と、歯肉(接合上皮、結合組織)反応は、フラップありで埋入したインプラントのそれらと似ていた。骨は成熟し、インプラント表面に密着していた。一部で骨吸収があり、
フィクスチャーのスレッド露出がみられた。
・パンチフラップレスアプローチ
インプラント周囲組織の反応は、必ずしも一定ではない。
動揺があった3本のインプラントでは、非常に顕著な骨喪失が示され、
最も歯冠寄りに位置していた4本のスクリュースレッドが露出した。
骨頂喪失が示されなかったインプラントと比較して、より深い歯肉溝を伴う長い接合上皮が観察された。
3か月の埋入期間終了時のインプラント生着率は以下の通り。
★パンチ7/10 ダイレクト9/10 フラップ10 /10
検討
・人体でのフラップレス法の生着率は98~100%という結果が出ている論文もあるが、
この研究では犬を用いたため、治癒期間中の使用とケアについて指導できなかったことが考えられる。
・歯科用インプラント周囲1.5㎜エリアにおける骨量は3種類の外科法で有意差は
見られなかった。
・パンチ法では、骨頂喪失量はより多く、BICはより低く、障壁上皮はより長かった。
・インプラントの固定は妨害されなかったため、粘膜を貫通しての、インプラント受容部の
直接的なドリリングによって、軟組織が骨に押しこまれることはないことがダイレクト法と
フラップ法のデータより示されている。
・ダイレクト法で1本インプラントが失われた原因は解剖学的問題と、可視化の欠如、
注水アクセスの限定によるものだと考えられる。
結論
本研究ではパンチ法で埋入したインプラント周囲では、骨と歯肉組織両方の治癒が妨害された。
そのため、インプラントの径よりも、遥かに幅の広い組織パンチを使用すると、
埋入治療のアウトカムに悪影響が及ぶのでそれは回避されねばならない。
まとめ
他の研究をみると、フラップレス法でもインプラントは可能であるようだが、
パンチ法では、パンチ径に気をつける必要がある。