著者:Angelo Sisti
出展:Clin oral Res23 2012 /526-535
目的
抜歯窩保存法で治癒した抜歯窩と未治療のままにしておいた抜歯窩をレントゲン分析することにあった。1治療せずにおいた5mmを超える頬側面骨欠損を伴う抜歯窩での寸法変化を分析し比較すること2インプラントの埋入時に行った伝統的な骨再生治療と、抜歯窩保存治療の相違を、縦断的に評価すること。
材料と方法
患者の選択として全身的に健康、上顎小臼歯領域で1本以上の歯牙の抜歯を必要としていた、軟組織の退縮を伴わずに頬側壁にて5㎜を超える骨欠損が示された全ての患者を、本研究に取り込んだ。患者等を補綴修復後24ヶ月に渡り追跡観察した。
治療:最小限に侵襲的なフラップレス法で歯牙を抜歯した。対照群では抜歯後に、軟組織と硬組織をキュレッタージし、特注の暫間固定式部分義歯(FPD)を隣接歯に接着した。
試験群では、軟組織と硬組織をキュレッタージし、Mg-eHA粒子と生食水を混ぜ、軟組織辺縁から根尖寄り2㎜のところまでの抜歯窩にそれを移植した。コラーゲンディスク(Gingistat)を用いて、歯槽骨抜歯窩を満たし、特注の暫間FPDを隣接歯に接着した。両群で暫間FPDには移植材を安定させ、頬側面の軟組織を支持するための楕円形のポンティックがついていた。8週目の観察時(T1)に、長さが13mmで径が4.25mmのインプラント(premium)を埋入した。必要であればインプラント埋入時に、骨の増多をMg-eHA粒子(SintLife600-900μm)とコラーゲンメンブレン(Bio-Gide)を用いて行った。歯肉弁を5.0モノフィラメント縫合糸によるシングル縫合法で縫合した。
結果
本研究には36-70歳の(平均年齢50.85歳)、20名の患者を取り込んだ(男性11名、女性9名)。
全ての患者が、それぞれの外科的段階に(抜歯とインプラント埋入)、問題なく治癒した。口蓋幅(PW)はそれぞれの時期で統計的に異なっていなかったことが示された。移植前のT0での垂直距離は6.93±1.49㎜。移植後のT0でのVDは0.17±0.09㎜。T1とT2ではVDは安定して留まっていた。移植前のT0でのVD平均値は、移植後のT0、T1、及びT2でのそれらと、統計的有意に異なっていなかったことが示された。
試験群(抜歯窩保存)では8週間後に10本のインプラント埋入した。T1とT2でのTW1とTW4は移植前のT0で得た同測定値よりも、統計的有意により高かった。TW4に関しては移植後のT0とT2の間は有意差あり。
対照群では、T1でのTW1とTW4の測定値はT0にて同レベルで得た測定値よりも、有意により高かった。
結論
頬側面の骨欠損が5mmを超える部位では、HAを適用することで、抜歯後の歯槽骨頂の吸収が最小限に抑えられうることが、本無作為対照付き治験で示唆された。
更に、抜歯窩の治癒後に行われる、伝統的な再生治療法よりも、この保存的治療法の方が頬側面骨壁のより良い水平的再生をもたらすように思われる。