コーンビームCTを用いて、オトガイ孔内の下歯槽神経の位置を調べる

著者:Lutz Ritter 等
目的
下顎前歯部は、最も頻繁な、インプラントの埋入位置の一つである。重篤に萎縮している 下顎骨であっても、この領域に埋入されるインプントは、固定式補綴物も、可撤式補綴物も支持できる。固定を最大限にするため、インプラントは、特に即時荷重時には、極力後方に埋入される。下顎前歯部へのインプラント埋入は、日常的に行われている、安全な治療法とみなされている。しかし、解剖には大きなばらつきがある。確実に利用可能な骨を最良に利用するためには、そしてまた、神経の損傷を回避するためには、解剖学的状況と、存在しうる下歯槽神経(IAN)のバリエーションを、インプラントの埋入前に、調べておく必要がある。部分無歯顎にインプラントを埋入する際に、よく適用されているものとして、他に、第一小臼歯ポジションへの埋入が挙げられる。大きなループは、傾斜したポジションで、イン プラントを埋入できる可能性を制限する。なぜなら、固定式上部構造用として市販されている、既製のアバットメントの角度は、最大でも30度だからである。
インプラントの埋入前に、神経の経路を調べるために勧められているレントゲンが、コーンビームCT (CBCT)である。本研究の目的は、連続患者から成る、統計的に関連性のあるサンプルにて、CBCTを利用しながら、オトガイ孔のサイズと形態を調べ、それと、下顎の萎箱との、そしてまた、ループの発生との相関関係を、後ろ向きに調べることにあった。
材料と方法
LANルーピングの発生頻度とサイズを調べるために、連続患者のコーンビームCTスキャンを評価した。患者の年齢と性別、萎縮の程度、並びにオトガイ孔での骨高径を考慮に入れながら、結果を比較した。
結果
1,010名の患者のスキャンを得た。31%の患者で、LANループが発見され、その頻度は、男性患者の方が(33.1%)、女性患者よりも(28.1%)、有意により高かった。ループの平均サイズは1.4±0.70mmで、最大は4.6mmであった。男性患者での平均ループサイズは1.6±0.74mm (最大4.6mm)、女性患者での平均サイズは1.4±0.63mm (最大4.4mm)であった。この相違は、有意であった(t検定)。最大4級までの、それぞれの萎縮クラスで、有意差は発見されなかった。
結論
三人に一人の患者で、LANループが存在し、サイズは0.4-4.6mmである。オトガイ孔間にインプラントが埋入される症例では、大きなアンテリアループは、LANを危険に晒す。充分な安全拒離が設けられるか、或いは、ループを発見するために、また、オトガイ孔間インプラントが埋入されている間に傷付きうる、切歯管の位置を知るために、三次元画像が利用されるべきである。