著者
Shuji Yoshino等 出展:INT JORAL MAXILLFAC IMPLANTS2014 29 432-440
目的
本1年無作為対照付き前向き研究で、審美ゾーンに上皮化結合組織移植片(SCTG)を伴いながら、及びそれ無しでインプラントを即時埋入し、暫間処理(IIPP)した後の、インプラントの成功率とインプラント周囲組織の反応を調べた。
材料と方法
インプラントは隣接歯根までの間隔を2mm以上あけながら、唇側面歯肉辺縁から3㎜根尖寄りのところに埋入した。
唇側ー口蓋側方向についてはインプラントを初期固定を得るために、抜歯窩の口蓋側に沿って埋入し、その際には、インプラントから唇側面の骨まで、1.5mm以上のギャップを残しておいた。25Ncm以上の埋入トルクで、インプラントの初期固定を達成し、インプラントー抜歯窩ギャップを埋めるために異種移植片(Bio-oss)を利用した。
試験群では1.5mm以上の厚さのSCTGを口蓋から採取。IIPP法に従って、唇側面の骨板とその上の歯肉との間で、全層エンべロップ弁を形成した。
準備しておいたエンベロップにSCTGを挿入し吸収性の縫合糸で固定。6か月後に最終的なインプラントレベル印象を採得した。
メーカーの指示に従いながら特注のジルコニアアバットメントを作製し35Ncmまでトルク締めした。続いて最終的なオールセラミック修復物を装着した。
データの収集と分析は、以下の追跡観察ごとにデータを比較した。
術前(T0)インプラント埋入直後(T1)インプラントの埋入から3か月後(T2)6か月後(T3)12か月後(T4)患者らを無作為に2個の群に割り振った。
結果
本研究には7名の男性と13名の女性が参加。(平均年齢52.6歳、27-87歳)
試験群
SCTG+IIPP 10名、対照群:SCTGなしのIIPP 10名、埋入20本、上顎中切歯領域13本、上顎側切歯領域2本、上顎犬歯領域3本、上顎第一小臼歯領域2本。
FGLの変化の統計的値は、T0からT4にかけてのFGLの平均変化量は対照群の方が統計的有意により高かった。T2にてmPLスコアが2と記録された1か所の試験部を除いて、mPLは両群で、研究期間中一貫して、0と1であった。 T2にてmBIスコアが2と記録された2か所の試験部を除いて、mBIは両群で、研究期間中一貫して、0と1であった。
試験群と対照群は、またそれぞれの時期はmBIスコアに関して統計的有意に異なっていなかった。
本研究は全ての時期でPISは0-3の範囲であった。それぞれの時期、試験群と対照群は近心面と遠心面の乳頭レベルについて、統計的有意に異なっていなかった。T4にて試験部の75%と対照部の80%で50%を超える乳頭の充填が観察された。
結論
本1年無作為対照付き前向き研究の制限内で、インプラントの即時埋入と暫間処理+抜歯窩への骨移植は、審美エリアでは歯牙を置換するための、価値ある治療選択肢とみなしうるだろうと思われる。SCTG+IIPP を行った患者の方が、上皮化結合組織移植を行わなかった患者よりも、唇側面歯肉レベルの変化は小さかった。本短期追跡観察では、良好な結果が達成されたが、このような治療法の長期効果を正しく評価するための、更なる研究が必要とされる。