著者
Georgios A.Kotsakis等
目的
本研究の第一目的は、大学のクリニックでインプラント治療を受けた患者から成る集団にて、維持タイプ(接着維持対スクリュー維持修復物)と、インプラント周囲疾患の有病率との関係を調べることにある。
インプラント周囲疾患の有病率に対して、修復物の連結が及ぼす影響も、第二アウトカムとして調べた。
方法
2011年9月から2012年10月にかけて、大学べ一スで行った横断的研究の一環として、インプラント周囲の臨床検査と、レントゲン検査を受けた患者に由来したデータを分析した。
結果
394本のインプラントを埋入した、139名の患者に由来したデータを分析した(平均年齢57.59歳)。
192本のインプラントが単冠を支持し、202本が固定式部分義歯を支持していた。計11.9%の患者が、インプラント周囲疾患に罹り、68.9%が、インプラント周囲粘膜炎に罹っていた。
接着維持修復物とスクリュー維持修復物を比較した時の、インプラント周囲炎とインプラント周囲粘膜炎の租オズ比(95%信頼区間)はそれぞれ、1.43(0.45、4.60)と0.89(0.53、1.48)であった。修復物のタイプと喫煙を補正した多変量モデルでは、結果は非有意に留まった(全てP>0.05)。
補正した分析では、疾病の有病率に対する、連結修復物の影響も認められなかった(P値>0.32)。
結論
本研究では、インプラント修復のための治療計画中に改良可能な、重要な局所的要素に焦点を当てている。
これに対して、過去の研究では主に、患者と関係した、インプラント周囲疾患のリスク指標に焦点が当てられた。
セメントを適切に選択し、除去すれば、接着維持はインプラント周囲疾患のリスク指標ではないことが、本所見によって示されている。
ここに提示した結果は、余剰セメントの問題を過小評価するものでも、インプラント周囲組織の健康に対するその悪影響を、過小評価するものでもない。
本結果では、適切な治療プロトコルと、材料の選択に関する、エビデンスに基づくアプローチに従うことで、余剰セメントを制限でき、結果として、セメントと関係した生物学的合併症を回避できることが示されている。
本研究では、接着維持群で起きたインプラント周囲炎が比較的少なかったため、結果の解釈は慎重に行われる必要がある。
全体的には、充分にメインテナンスされていた、大学で治療された本サンプルにおける、インプラント周囲炎とインプラント周囲粘膜炎の発症率は、維持のタイプや修復のタイプに関係なく、高い。
故に、インプラント周囲疾患の、改良可能なリスク指標を発見し、インプラント周囲疾患の発症を減らすのに役立つものを発見するための、更なる研究が必要とされる。