再生歯内療法とは損傷された象牙質、根管構造、歯髄―象牙質複合体の細胞を含めた組織を生理学的に置換することを目的とした生物学に則した治療法であると定義されている。再生歯内療法は2011年にADAによって正式な治療法として認められており、2014年から米国の大学歯内療法専門医課程において必須項目として臨床教育が行われている。
再生歯内療法の目的
① 臨床症状と根尖病変の改善
② 歯根脂質の厚み、長さの増大(理想であるが必須ではない)
③ 生活歯髄反応の回復
であるが①は通常の歯内療法と同様の目的であり、②③は再生歯内療法の独特のものである。
再生歯内療法の臨床術式について
1.ケースセレクション
・根未完成失活歯
・ポストコア築造やクラウン修復の必要が無い歯
・コンプライアンスの高い患者・保護者
・使用する薬剤にアレルギーがない患者
2.インフォームドコンセント
・2回(もしくはそれ以上の)通院
・抗菌薬の使用
・歯の変色、感染が除去されない可能性について
・代替治療法;アペキシフィケーション、抜歯、治療を行わない選択肢
3.治療1回目
・局所麻酔、ラバーダム防湿、髄腔開拡。根管ごとに20ml の次亜塩素酸ナトリウムにて根管洗浄を5分間行う。その後生理食塩液もしくはEDTA根管ごとに20ml 5分間洗浄する。洗浄針はクローズドエンドもしくはサイドベント付きのものなどの使用が推奨される。洗浄針は根尖孔から1mm歯冠側に配置し、根尖部幹細胞に対する毒性を最小に留める。次亜塩素酸ナトリウム濃度は低濃度が望ましい。
・ペーパーポイントで根管を乾燥させる。
・水酸化カルシウム、もしくは低濃度3種類混合抗菌薬を根管に貼薬する。抗菌薬はシプロフロキサシン、メトロニダゾール、ミノサイクリン最終濃度0.1~1,0mg/mlを用いる。歯の変色の原因とされているミノサイクリンには注意を要する。(CEJよりも歯冠側に貼薬を行わない)
・3~4mm仮封を行う。
4.治療2回目(1~4週間後)
・1回目の治療効果を確認する。症状や感染の兆候がある場合には、再貼薬もしくは代替治療案を検討する。
・血管収縮薬を含まないメピバカインで局所麻酔を行う
・20mlの17%EDTAを用いて根管洗浄を行う。
・ペーパーポイントで乾燥
・Over-instrumentationにより出血を促す。エンド探針を根尖孔より2mmほど突出させ、理想的にはCEJのレベルまで血液で満たされるのが望ましい。
・3~4mm程度の修復充填物が行えるよう、止血する。必要であればコラテープなどの吸収性材料を血餅上に充填し、White MTAを覆髄材として使用する。
・3~4mm程度のグラスアイオノマーセメントを覆髄材の上に行う。
5.経過観察
・疼痛主張、瘻孔などの臨床症状がない
・レントゲンにて根尖部透過像が消失している。(6~12カ月で確認できる)
・歯根脂質の厚みの増大
・歯根長の増加
・歯髄生活反応の確認
現在の段階では組織学的には歯髄再生を伴わないとしても、根尖性歯周炎は治癒し歯髄生活反応が復活するので、今後注目され長期的な予後も向上する可能性があるであろう。