インプラント周囲病変に対する非外科治療 まとめ

歯界展望VOL132 NO4 2018-10

インプラント周囲病変の増加に伴い、治療方法の確立が急務となっている。治療のメソッドや治療器材の効果を比較した研究が進められているものの、現在のところ、インプラント周囲病変の改善に限られた効果しか示されておらず、エビデンスに則った治療方法はいまだ確立されていない。
治療において患者自身のプラークコントロールは必要不可欠であるため、モチベーションをかけ、口腔衛生指導を行う。同時に、非外科的なデブライドメントにより粘膜縁上縁下のバイオフィルムを除去していく。再評価後、疾患が治癒していたらサポーティブセラピーへと移行するが、改善していなければ外科処置を検討する。残存歯がある場合には、その歯周治療も必要となる。本稿では、インプラントの周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に対する非外科治療について、様々な方法や器材の効果を検討していく。

インプラント周囲粘膜炎に対する非外科治療

1、患者自身によるプラークコントロール
インプラント周囲粘膜炎の治療に、患者自身によるプラークコントロールは不可欠だが、それだけで疾患を治癒に導くことは難しい。原因となるバイオフィルムをより確実に除去するためには、時に治療的介入も必要であろう。

2、非外科的デブライドメント
非外科治療を行う目的は、インプラント表面から確実にバイオフィルムを取り除き、インプラント周囲組織の状態を改善することである。
1、手用スケーラーによる非外科的デブライドメント
2、エアフロー・超音波スケーラー
エアフローのほうが多少効果は高いものの、統計的有意差は認められなかったことから、臨床的にはどちらの器材を用いても良いと思われる。

インプラント周囲粘膜炎の治療
・非外科的なデブライドメントはインプラント粘膜炎に効果的である
・クロルヘキシジンを併用しても追加的な効果は認められない

インプラント周囲炎に対する非外科治療
まずは疾患の原因がバイオフィルムであることを患者に理解してもらったうえで口腔衛生指導を行い、非外科治療により粘膜縁上縁下のプラークコントロールを徹底する。インプラントの場合には、プラークコントロールを適切に行うために必要な上部構造の形態修正も、非外科治療に含まれる。再評価時にインプラント周囲組織の改善が認められない場合は、外科処置を検討する。

1、手用スケーラー・超音波装置
2、エアフロー
3、レーザー
4、抗菌薬・消毒剤の局所応用

インプラント周囲炎の非外科治療
・インプラント周囲炎に対し非外科治療は一定の効果があり、必要なステップである
・非外科治療期間中に、患者自身のプラークコントロールを確立し、上部構造を形態修正しておくことが重要である
・エアフローとEr;YAGレーザーはいくらか臨床的なメリットがあると思われる
しかし、インプラント周囲炎は非外科治療だけでは治癒せず、多くの場合、外科処置が必要となる。