インプラントアバットメント上の、歯肉縁上、及び縁下のバイオフィルム形成

Supra-and Subgingival Biofilm Formation on Implant Abutments with Different surface Characteristics

様々な表面特徴を有するインプラントアバットメント上の、歯肉縁上、
及び縁下のバイオフィルム形成。

筆者
Cornelius Elter 等

概要
インプラント上の歯肉縁下、及び歯肉縁上バイオフィルム形成を、定量分析するための非侵襲的な方法を様々な表面改良を考慮に入れながら、確立することにあった。

チタンインプラントの長期成功の条件として、インプラント周囲組織における炎症の有無があげられる。天然歯周囲の歯肉と、インプラント周囲の粘膜は、歯肉縁下バイオフィルム形成を阻止する能力を有し、初期プラーク沈積に対して同じような反応能力を有すると推測されている。

口内表面の細菌の初期付着は、表面の物理化学的特性に影響される。

インプラントが骨統合した後では、歯科用インプラントにアクセスして、インプラント表面上のバイオフィルム形成を、非侵襲的に分析することは出来ない。今日までバイオフィルムの蓄積に対する組織の反応は、インプラントを摘出することで研究されている。

暫間的に装着されるアバットメントを用いての非侵襲的な方法で、インプラント周囲の歯肉縁上、及び縁下バイオフィルム形成を分析すること。


材料と方法
部分的に無歯顎で、1本以上のスクリュータイプインプラントが埋入されてあった、全身的に健康な男女を含めた。

ヒーリングアバットメント装着後、2週間に渡って、インプラント周囲粘膜を治癒させた。アバットメントは、歯肉縁上部分と縁下部分を有することを条件とした。研究前の3ヵ月間に行われた抗菌治療は、排除基準とみなした。

14日目にアバットメントを取り外し、滅菌水で洗浄して、エアーで乾燥した。ヒーリングアバットメント上のバイオフィルム形成を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した。Rutherfordの後方散乱探知法(RBSD)を用いて、バイオフィルムに覆われていた表面を見つけた。バイオフィルムによる歯肉縁上、縁下表面の被覆を個別に、表面分析ソフトを用いて分析した。

結果
本研究には11名の患者が参加した。(女性4名、男性7名 18-75歳、平均52歳±21,2歳) 

研究開始の3~6ヵ月前に、1本以上のスクリュータイプブローネマルクインプラントが埋入されてあった。14日の間に、15個のチタンヒーリングアバットメントを装着した。全てが歯肉縁上部分と縁下部分を有し、付着歯肉によって囲まれていた。4個の修正面の位置(近・遠心・頬・舌側)はアバットメント装着過程からの、無作為結果であった。

表面粗造測定は、サンドブラスト面は0.9㎛、研磨面は0.4㎛、酸エッチング面は0.3㎛、対照面は0.2㎛のRaを有していた。アバットメンントの全表面の53%が、歯肉縁上に、47%が縁下に位置していたことがSEM分析によって示された。

歯肉縁上面では全体の17.3%±23.1%が、バイオフィルムによって覆われていたのに対し、歯肉縁下エリア では0.8%±1.0%のみであった。(.05)

結論 
ここで記述した方法を用いたことで、チタンヒーリングアバットメントの、バイオフィルムによって覆われていた面を定量分析することが出来た。表面の粗造性は、歯肉縁上エリアでのバイオフィルム蓄積に、有意に影響することが、本研究の結果より示されている、しかし、14日間の期間中に、歯肉縁上プラークの存在は、歯肉縁下エリアにおけるバイオフィルム堆積の有意の増加に繋がらなかった。更に、表面の粗造性は、歯肉縁下面に、対するバイオフィルム堆積に、影響しなかった。 

出典 
Journal of Clinical Periodontology