移植材を使用しないオステオトーム上顎洞底挙上法。前向きパイロット研究3年結果。

著者:Rabah Nedir等
出展:COIR,20,2009,701-707
目的;前向きパイロット研究にて、移植材を伴わないオステオトーム上顎洞底挙上(OSFE)法を用いて、萎縮した上顎臼歯部に10ミリ以下の短いITI-SLAインプラントを埋入した。
本論文にはインプラント周囲骨レベル変化を評価した3年データを提示する。
外科処置と補綴処置
2003年4月から12月 プライベート診療所にて,25本のstraumann SLAインプラントを臼歯エリア16本 小臼歯エリア9本にOSFE法で埋入。
患者は、17名(14名女性、3名男性)平均年齢 54.2±9.6歳  範囲38-69歳。
インプラントの長さは、10ミリ、8ミリ、6ミリ、径は4.1ミリ、4.8ミリ。8本のインプラントはタイプ2の骨に12本はタイプ3の骨に5本はタイプ4の骨に埋入した。
3-4ヶ月の治癒後に、臨床的な安定性を評価した。
結果
1件の症例のインプラント埋入から3年目の検査時にかけてのレントゲン像上の追跡観察の結果では、排膿の兆候、または上顎洞と関係した病的状態を訴えた患者は皆無であった。インプラントは全て臨床的に安定していたことで、100%の生着率が達成された。
3年目で、上顎洞内の平均骨増加量は3.1±1.5ミリ、上顎洞内に突出していたインプラントの長さの平均値は1.8±1.1ミリ、平均CBLは0.9±0.8ミリであり、3年目のデータを1年目と比較すると、上顎洞内の骨は平均で0.6±0.7ミリ増加、インプラントの突出長さ0.3±0.5ミリ減少、CBLは0.3±0.4ミリ減少であった。
平均上顎洞内骨増加量をインプラント埋入時に測定したインプラントサイドのRBHと対比すると、RBHが小さめ(1-5ミリ)であった部位に埋入した20箇所全てのインプラントサイドはRBH値が5ミリを越えていた部位に埋入したそれらよりも、より多くの上顎洞内骨を得た。
術後の不快事項は、鼻血1名、鼻詰まり2名で、これらは数日以内に弱まった。
これらの事象を除いて、治癒は問題なかった。
結論
1萎縮した上顎でのOSFE治療で、骨形成を促進するのに移植材は必要ない。
2インプラントの同時埋入を伴うシュナイダー膜の挙上は、上顎洞の本来のリミットを超えて骨を作り出すのに、充分である。
3成功率は100%であったことから、移植材を伴わない本治療法は予知的であると思われる。
4、1年目の検査時に観察される骨の増加は保たれ、萎縮しない。
5、萎縮する移植材とは対照的に、骨増加は2年間で、僅かではあったが、統計的有意にい増えた。